エンプラ/スーパーエンプラのレーザー加工

DLMP®を使用したHalar®フッ素樹脂の加工

Halar®(ヘイラー)はソルベイスペシャルティポリマーズ社によって開発されたエチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)の商品名です。

Halarは高耐腐食性と超低透過性に優れ、酸、溶剤、酸化剤、腐食性物質に対して高温高濃度の環境下でも卓越した耐性を発揮します。またHalarは熱や火に強く、電気絶縁に最適な特性を備えています。

Halarの本来の色はオフホワイトですが、場合によっては黒も利用可能で、シート、ロッド、織り目の粗い布としても入手可能です。

 

Halar®とDLMP®技術

Halarは耐熱性と耐酸化性に優れた材料特性を持ち、デジタルレーザー加工(DLMP)技術に対応します。Halarとレーザーエネルギーとの相互作用によって生じる効果は、材料のアブレーションと材料改質です。Halarの場合、レーザー切断、レーザー彫刻、レーザーマーキング加工が可能です。レーザーエネルギーによって材料を除去することで、材料の切断、彫刻やマーキングのほか、レーザーエネルギーで表面特性を変化させて目に見えるマークを形成することもできます。

 

材料のアブレーション

材料のアブレーションとは、材料を取り除く物理的なプロセスのことを指します。材料表面の上から下まで完全に除去する「レーザー切断」、材料の表面から指定された深さまでを部分的に除去する「レーザーマーキング」が適用可能です。

Halarは10.6μmのCO2レーザーエネルギーを完全に吸収します。Halarがレーザーエネルギーを吸収すると、光エネルギーを分子振動(熱)にすばやく変換します。十分な熱が発生すると、急速溶融して気化し、分子構造のさまざまなポイントで分子結合が分解します。レーザー光路にある材料は除去され蒸気を発生させますが、裁断くずが出たり変色することはありません。

このためHalarのレーザーアブレーションには、主にC O2レーザーが使用されます。レーザーが照射された箇所や光路の外縁部は熱の一部を伝導します。この熱の影響を受ける領域を熱影響域(HAZ)と呼びますが、Halarは溶融が高く、隣接面は溶融することなく伝導した熱に耐えることができるため、HAZを最小限に抑えることができます。

 

材料特性の改質

10.6μmのCO2レーザーは切断や彫刻を目的とした材料の除去にとても有効ですが、コントラストを生成するにはファイバーレーザーが適しています。Halarは1.06μmのファイバーレーザーエネルギーを吸収して熱に変換します。加工に用いる出力を厳重に制御すれば、材料を除去せずにコントラストを生成できます。この加工は炭化と呼ばれることがあり、黒色のマーキングを形成しますが、残留物や粉末は発生しません。

 

レーザーマーキング(表面)

Halarの表面にファイバーレーザーでマーキングすることで、番号、テキスト、バーコード、写真などの情報を伝達できます。マークは恒久的で、ほどよいコントラストが得られるため、印字方法に代わる魅力的な方法となります。この加工は、人も機械も判読可能な情報の作成に最適です。

複合加工

Halarは材料を動かしたり再固定したりする必要なく複数の加工を適用できます。画像の例は、シートストックからのカット/材料にひし形を彫刻/シリアル番号を表面にマーキングという複数の加工を組み合わせた例です。これらの加工の順番はオペレーターが制御できます。

 

環境、衛生、および安全に関する考慮事項

レーザーと材料間の相互作用では、常にガス状流出物や粒子が生成されます。CO2レーザーを使用したHalarのレーザー加工では、複合ポリマーの化学的性質により、ガスを含む多様なフッ素や塩素が生成されます。中でも注意すべきは、この流出物に含まれる塩酸とフッ化水素です。これらのガスや粒子は、政府規制に従って外部環境に排出する必要があります。あるいは、流出物を最初にろ過システムで処理してから外部環境に排出することもできます。Halarは高熱への耐性がありますが、十分なレーザーエネルギーが加えられれば、発熱反応を引き起こす場合があります。そのため、Halarのレーザー加工を常に監視する必要があります。