エンプラ/スーパーエンプラのレーザー加工

ITOコーティング付きPETフィルムのレーザーアブレーション

本稿では、ITOコーティング付きPETフィルムのレーザーアブレーションについて説明します。

このフィルムは、酸化インジウムスズ(ITO)がコーティングされたPETフィルムです。アブレーションは材料を取り除く物理的なプロセスで、材料を上から下まで完全に除去する、もしくは材料の上部から指定された深さまでを部分的に除去する加工方法です。本加工に用いたレーザーシステム構成、プロセス設定、および結果について以下に示します。

 

加工素材

  1. Thorlabs, Inc.:250mm x 200mm x 0.2mmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムシート、片面に導電性インジウムスズ酸化物(ITO)コーティング、製品番号OCF2520

 

レーザーシステム構成

ITOコーティング付きPETフィルムの加工には、75W 9.3μm CO2レーザー、50W 1.06μmファイバーレーザー、および4xレンズを備えたユニバーサルレーザシステムズのULTRAを使用しました。また高品質なレーザー加工を実現するため、光学部品保護付きエア/ガス・アシストおよびダウンドラフト切断テーブルを使用しました。

  • 光学部品保護付きエア/ガス・アシスト:
    エアおよびガスを使用したレーザー加工には、「コーン」および「バックスイープ」の構成が利用できます。コーン構成では、レーザー・ビームの経路方向に沿って圧縮エア/ガスが流れます。コーンはレーザー光学部品の保護、材料の冷却、煙や炎の発生を防ぎます。バックスイープ構成では、材料の作業表面に沿って圧縮エアが流れます。バックスイープは、特定材料の切断や彫刻の際に生成される重い微粒子を取り除きます。
  • ダウンドラフト切断テーブル:
    ダウンドラフト切断テーブルは、空洞構造のハニカムコア表面でターゲット素材を支持し、加工処理している素材の両側から煙や裁断くずなどの副生成物を排出することで、きれいなカットエッジを生成すると共に、素材裏面の傷を減らします。またエア/ガス・アシストおよびコーンは、圧縮エア/ガスの噴射によって、副生成物を切断部からダウンドラフト切断テーブルに組み込まれた排気経路に送ります。

PETフィルムは、ITOコーティング層を上向きに切断テーブルに設置しました。素材の固定については、これ以上の作業は必要ありません。

 

プロセス設定

PET基板に損傷を与えることなく、導電性ITO層の高品質なレーザー彫刻を達成するプロセス設定を表1に示します。デザイングラフィックは、導電性ITO層のレーザーアブレーション加工領域を示しています(図1)。

表1.プロセス設定

Process Laser Power (%) Speed (%) Freq1 (kHz) Wave2 ID3 PPI4 Time
Selective Ablation 50 W 1.06μm Fiber 15 50 50 0 6 3 min, 15 sec
Vector 75 W 9.3μm CO2 15 10 500 35 sec
  1. Freq:ファイバーレーザーパルスの周波数設定
  2. Wave:波形の選択
  3. ID(Image Density):レーザー彫刻の画像密度

黒で示されている領域は除去/白い領域は影響を受けません図1. 黒で示されている領域は除去/白い領域は影響を受けません

 

結果

ITOコーティング付きPETフィルムをレーザーアブレーション加工した結果、PETフィルム基材を損傷することなく導電性ITOコーティング層を除去することに成功しました。

レーザー彫刻されたパス全体の抵抗率をFluke 115 True RMSマルチメーターを用いて測定したところ、各領域の抵抗率が0Ωを示し、導電層の完全な除去が確認されました。処理後のクリーニングは必要ありませんでした。また加工サンプルを倍率200倍の顕微鏡で分析し、下層のPETフィルムに融解部は見られず損傷がないことを確認しました。(図2および3)。

切断エッジの顕微鏡画像(200倍)。熱影響部は75μm図2. 切断エッジの顕微鏡画像(200倍)。熱影響部は75μm。
顕微鏡の照明条件により、透明フィルムが青く見えます。

 

レーザーアブレーションされたITOコーティング層とレーザー切断されたPETフィルムの顕微鏡画像(200倍)図3. レーザーアブレーションされたITOコーティング層とレーザー切断されたPETフィルムの顕微鏡画像(200倍)。
顕微鏡の照明条件により、ITOコーティング層は青色、フィルムのアブレーション加工領域は茶色に見えます。
黒い領域はレーザー切断された部分です。

 

完成したサンプルの顕微鏡分析によって、すべての形状と寸法において設計した通りの品質を得られたことが確認されました。ITOコーティング付きPETフィルムの加工サンプル画像を図4に示します。

完成したITOコーティング付きPETフィルムのサンプル図4. 完成したITOコーティング付きPETフィルムのサンプル